どんな部屋にも馴染み、買い足したいときに同じものが手に入る、無印良品のロングセラー収納。開発に携わる担当者に、そのふか~いこだわりを取材。あの名品たちには、無印良品のものづくりへの信念が凝縮されていました。
※商品のサイズ表記のWは幅、Hは高さ、Dは奥行きです。
\話を聞いたのは……/
良品計画 生活雑貨部部長
依田徳則さん
入社後18年間、ほぼ生活雑貨部に在籍。ファニチャー課のMD担当として長く商品開発に携わる。
本当に使いやすい収納のためリアルなユーザーの声を聞く
1982年の段ボール製の衣装ケース発売以降、進化を続けている収納用品。その原動力のひとつが、消費者からの意見だ。
「店舗に寄せられたお客様の声を、スタッフがオンライン上で登録できる社内システムがあるんです。ほかにも公式サイトのレビュー、電話相談の内容など随時共有し、商品開発に活かしています。商品化にあたっては、国のJIS規格に加えて、過去の品質トラブルから導いた『良品基準』という独自基準をパスしたものだけに。商品を永く使ってほしいので、改良の際は既存商品と新商品が調和するか、問題なく使えるかということを重要視します。」
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おきたい場所にぴったりおさまる
ユニットシェルフ
1994年〜
パイン材ユニットシェルフ
(W86×H120×D39.5cm) 15,900円/無印良品 銀座
1997年〜
スチールユニットシェルフ
(W86×H120×D41cm) 14,900円/無印良品 銀座
2006年〜
ステンレスユニットシェルフ
(W86×H120×D41cm) 27,900円/無印良品 銀座
日本の住宅事情を考慮して独自の基準を導き出した
ユニットシェルフの開発は、日本家屋の長さの単位である1間(約180㎝)にちょうどいいサイズを導き出すことから始まった。ひと間にふたつ並べられて、かつ中途半端な隙間ができないのが、84㎝という絶妙な横幅。この横幅84㎝を基準に開発したユニットシェルフの完成以降、無印良品のすべての収納家具は、このサイズを基準寸法として設計されている。
現在は1994年から扱っているパイン材をはじめ、スチール、ステンレスと3種類の素材を揃えている。
「パイン材は経年変化や傷を楽しみながら、愛着を持って使える素材。スチールは最小限の部材で強度を保てるため、棚板やパイプが薄く、存在を主張しすぎないことが利点ですね。ステンレスは水に強く、台所など水まわりでの使用も安心です」
最大の魅力は、使い方の自由度にある。棚板にものを直置きするのはもちろん、引き出し、ワードローブバーなど家具やパーツを追加すれば、収納したいものに合わせてカスタムできるのだ。
「置きたいところにぴったりと収まって、目的に合うように組み変えられる。そんな汎用性に幅広い支持をいただいています」
\CHECK!/
無印良品の収納がぴったり収まる設計
ポリプロピレン収納、ラタンボックスなど無印良品のあらゆる収納を自由に組み合わせられるのが、このシェルフの魅力。何をどうレイアウトするか、組み合わせは無限大!
使い方に合わせてパーツを自由に組み合わせ
キャスター、ワードローブバーなどパーツを足して自由にアレンジできる。ほかの家具と調和しやすい木製棚は、金属の無機質さを和らげるのにひと役買っている。
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生活環境とニーズに合わせて選べる
ポリプロピレン収納ケース
ポリプロピレン 衣装ケース 中
(約W40×H24×D65cm)2,290円/無印良品 銀座
ポリプロピレン 小物収納ケース 大 ホワイトグレー
(W26×H17.5×D37cm)1,490円/無印良品 銀座
再生ポリプロピレン入りスタンドファイルボックス ワイド
(約W15×D27.6×H31.8cm)790円/無印良品 銀座
暮らしに溶け込むよう製品の色合いにまで気を配る
サイズ違いを含め70種以上あるポリプロピレン収納。実は商品によってカラー展開が異なるのをご存知だろうか。それはユーザーの心理に合わせた工夫だという。
「もとは着色工程を省いた半透明のみの展開でしたが、部屋に置いて使うユーザーから、中が見えないものが欲しいという声が聞かれるようになったんです」
そんな声に応えて後発で登場したのが、不透明のホワイトグレー。その色合いにもこだわりがあった。
「無印良品の日用品は、『MUJIグレー』と定義した色合いの異なるいくつかの色を、用途に合わせて使い分けています。例えば、掃除用品は汚れが目立たない濃いグレー、収納やシェルフは圧迫感の少ない淡いグレーというように。暮らしに馴染むよう、微妙な色合いにまで気を配っています」
魅力はまだまだある。ほこりを集めやすい素材のため帯電防止剤を配合したり、別売りのキャスターをつけられたり、スタッキングしたときの安定性を確保したり……。細かいところへの配慮が冴えわたるのも名品たるゆえんだ。
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表側はマット仕上げで高級感のある見た目に
樹脂を成形する金型の表面に細かいシボをつけることで、マットな表情に仕上がり高級感がアップ。部屋に馴染みやすい見た目になっている。一方で内側はつるっとしているので、物の出し入れがしやすい。
前面と背面を互い違いに重ねられる
例えば、積み重ねたポリプロピレン収納をリビングとキッチンの間仕切りとして使うとき、互い違いに積み重ねることができるので、キッチン側でもリビング側でも引き出しが使える。
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飾り棚にも収納棚にもなる汎用性で人気
スタッキングシェルフ
3段×3列・オーク材(W122×D28.5×H121cm) 39,900円/無印良品 銀座
シンプルな構造やデザインにこそこだわりが詰まっている
棚の幅は2 種類あり、追加棚をあとづけすれば縦にも横にも簡単に拡張できるスタッキングシェルフ。奥行きは28.5cmとコンパクトな設計なので、手狭なキッチンの食器棚やワンルームの間仕切りとしても活躍する。一見シンプルなデザインだが、開発にあたっては何度も試作を重ねたそう。
「家具をつくるときには、見た目の美しさ、耐久性、心理的な安心感を考慮し、落としどころを探ります。特にユニットシェルフは構造がシンプルなので、板の厚さが1mm変わるだけで印象がまったく違うんですよ。単純に厚くすれば耐久性と見た目の安心感は高まりますが、デザインとしては野暮ったくなるし、材料のコストが上がることで販売価格が高くなってしまう。納得がいくまで試作を繰り返し、ちょうどいいバランスを探りました」
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3つの基材で簡単に組み立てできる
ユーザー視点に立って組み立てやすさを重視。慣れていない人でも簡単にできるよう、側板にパイプを立て、棚板を差し込むという単純な作業で完成する仕様に。棚を拡張する際も作業は同じ。もちろん安定性は抜群。
材質は家具との調和を考えオークとウォルナットの2種
2014年ごろからは北米産の木材を中心に使用。ナチュラルな色味でどんな空間にも馴染むオーク材と、フローリングに多く使われるウォールナット材の2種。いずれもほかの家具との調和を考えた色展開になっている。
永く使える製品を生み出すために、無駄を削ぎ落としながらも細部まで気を配る。手ごろな価格で使い勝手がいい、ユーザーにとって〝本当にいいもの〞を追求する。それが無印良品のものづくりの信念であり、たくさんの人から愛されている理由なのだ。
2025年mina4月号より
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