自分だけのこだわりを持ち、あるモノを偏愛する女子にクローズアップするこの企画。今回は、韓国文学にハマっているというモデルの前田エマさんにインタビュー! 好きになったきっかけやお気に入りの作品について、詳しく教えてもらいました。
美しく力強い表現に魅せられ、すっかり韓国文学に夢中に。
前田さんが韓国文学の世界へ足を踏み入れたのは、今からおよそ1年半前。家での時間が増えたことをきっかけに韓国ドラマにハマり、韓国の文化や歴史について知りたいと思うようになったそう。
「ドラマでBTSの音楽と出会い、友達の影響で追いかけ始めたのですが、彼らの曲は歌詞に社会問題を取り入れていたり、メッセージ性の強いものが多くて。メジャーなアイドルがそういうことを発信するってすごいなと感銘を受け、韓国について知りたいと思いました。たくさんの作品を読むうちに、それまで自分には関係ないと思っていた社会問題も決して無関係ではないということに気づくことができました」
大の読書好きであるものの、実は海外文学に対して少し苦手意識があったという前田さん。海外の作品を楽しく読めないことを、どこかコンプレックスに感じていたのだとか。
「そんな私でも、韓国文学はスッと読むことができたんです! 日本語と韓国語が少し似ているからなのか、文章が自分の心にしっくりきて、それでいて『こんなに美しい表現があるんだ!』という発見もあって……。韓国語の翻訳家さんは自分の意見を積極的に発信している方が多いので、ツイッターなどで『こういう理由でこの作品を推しているのか』というのがわかるのも、本を手に取る時のポイントになっています」
前田さんのお気に入り3冊。
チェ・ウニョン『ショウコの微笑』(牧野美加・横本麻矢・小林由紀 訳)
日本から韓国へやってきたショウコと“私”の交流を捉えた表題作をはじめ、時代や国の異なる7つの物語を収録。「私が最も感動したのは『シンチャオ、シンチャオ』。社会的な問題を私たちにもわかる温度感で表現してくれる、好きな作家さんです」
ハン・ガン『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子 訳)
アジアから唯一マンブッカー賞を受賞した、注目の作家による短編集。「1話1話が短く、とても読みやすい。まるで詩集を読んでいる感覚に。本文にはテクスチャーの違うさまざまな白い紙が使われていて、ページをめくるたびにワクワクします」
ハン・ガン『少年が来る』(井手俊作 訳)
1980年5月に韓国の光州で起きた民主化抗争“光州事件”を描く。「私が初めて手に取った韓国文学です。書かれていることは本当に残酷で胸が苦しくなるのですが、ハン・ガンさんの言葉選びがとても美しく、そのギャップに衝撃を受けました」
自分も一緒に勉強しながら、学びの輪を広げていきたい。
前田さんは現在、出版社「クオン」が運営するウェブメディアで韓国文学についての連載を執筆するほか、韓国文化への造詣が深い教授を招いて勉強会を主催するなど、広く発信する活動も行っている。
「前回のイベントはオンラインも含め200人くらいが参加してくれて。学びたいと思っている人がたくさんいることを実感しました。連載の原稿を書く時は、難しいテーマでも決して背伸びせず、誰にでもわかる言葉で書くよう心がけています。私自身も文学を通じて自分の世界が広がった経験がありますし、周りの人から『もっと知りたくなりました!』と言ってもらえるのがすごく嬉しいです。こういう活動はこれからも長く続けていきたいですね」
-Profile-
前田エマ(29)@emma_maeda
神奈川県出身。雑誌やカタログ、広告を中心にモデルとして活躍するほか、メディアでの執筆活動も盛ん。小説以外に漫画も好きで、お気に入りの作品は『NANA』と『同級生』シリーズ。今一番欲しいものは“本を読む集中力”だそう。
SHOP INFO
「チェッコリ」
出版社「クオン」が運営する、韓国書籍の専門店。小説や漫画、エッセイに加え、料理本や人文書まで幅広く取り扱う。韓国の作家やアーティスト、言語学の専門家などを招いたトークイベントも積極的に開催している。
住所:東京都千代田区神田神保町1-7-3 三光堂ビル3F
☎ 03-5244-5425
営業時間:火〜金12:00~20:00、土曜11:00~19:00
定休日:日・月
◎写真/染谷かおり ◎取材&文/大場桃果
2022年mina4月号より