2024.04.12

木内酒造のバー専用バス「BAR BUS HITACHINO(バーバス常陸野)」に乗って、ビールに日本酒、ウイスキーの蔵を巡る旅【週末“非日常”TRIP】

創業200年を越える、茨城県の酒蔵「木内酒造」。日本酒だけでなく、ビールやウイスキーなど幅広い酒造りを行っています。フクロウのイラストがかわいい「常陸野ネストビール」といえば、ご存知の方も多いかもしれません。その木内酒造が、今までにないすごいバスをつくってしまいました。バー専用バスで行く、酒蔵巡りの旅とは? 乗車の様子をレポートします。

 

バー専用バス「BAR BUS HITACHINO(バーバス常陸野)」って?

2024年4月より運行を開始した「バーバス常陸野」は、これまでにない、木内酒造のまったく新しい試みです。バスの中にお酒を提供できるバーがある! そんな特別仕様のバスをつくってしまったのです。バスは東京駅を出発し、「日の丸ウイスキー」の蒸溜所、「常陸野ネストビール」のブルワリー、そして「木内酒造」の酒蔵を巡ります。つまり、バスに乗車中も見学先も、常にお酒が傍にある!とにかく酒尽くしのツアー。いつ何時もお酒が切れる心配はありません。

 

各製造現場は離れているので、今まで3か所を1日で巡るのはちょっと大変でした。車がないと行きづらい場所もあり、そうすると運転者はお酒を飲むことができませんでした。でもせっかく行くなら誰にも気兼ねなく、みんなで楽しくお酒を飲みながら旅したいですよね。そんなお酒好きな方々の長年の望みを叶えた、画期的なバスツアーなのです。

 

早速乗車してみると、バスの中には本格的なバーカウンターがどどーんと登場!!しかもとってもおしゃれです。内装デザインは、トランクホテルをはじめとする、洗練されたデザインのオフィスや商業施設などを数多く手がけているジャモアソシエイツ。天井や壁には本物の木材が使われており、居心地よく過ごせるよう、鳥の巣の中にいるようなイメージでデザインしたそうです。

 

カウンターにはスタッフが常駐し、ビール、ウイスキー、ジン、梅酒などをフリーフローで楽しむことができます(移動中は危ないので、カウンターの利用はバスが駐車している時間のみ)。ビールは設置された専用サーバーから注がれるという嬉しさ。まさかバスの中がこんなことになっているなんて、まるで夢のよう。これは誰だってテンション上がります。

 

ツアー参加者には、保冷度の高いオリジナルタンブラーと、ロゴマークの付いたバッグ、そして酒飲みの必須アイテム、水! これらのセットがプレゼントされます。どこまでも気が利いている!バス内でお酒を楽しむときには、このタンブラーに注いでくれますので、出発前にまずは一杯! ちなみに車内はトイレ付きなので、少々飲み過ぎても安心です。

 

「日の丸ウイスキー」の蒸留所で、シャルキュトリーとペアリング

バスはサービスエリアで休憩を挟みながら、2時間弱で「日の丸ウイスキー」を製造する茨城県の八郷蒸溜所に到着。ここは遠くに筑波山をはじめとする山々が眺められ、自然に囲まれたとても気持ちの良い場所です。建物は石岡市の旧公民館をリノベーションしたもの。地元の生産者が育てた大麦、小麦などを使い、ウイスキーやジンを製造しています。木内酒造の日本酒で使われる酒米の削られた部分なども、グレーンウイスキーに無駄なく使われているそうです。酒米の回りの部分は日本酒では雑味になるために取り除きますが、ウイスキーにとっては味わいを増してくれる大事な原料のひとつになるのです。

 

この日は特別に、木内酒造の9代目社長、木内敏之さんがお出迎えしてくれました。ビジターセンターの入り口には、木内酒造の酒造りの歴史やウイスキー製造に関する説明、循環型の酒造り等について、パネル展示で紹介されています。木内酒造では、地元のさまざまな生産者と連携し、規格外で販売できない素材や、破棄されていた素材などにも目を向け、お酒に利用することでフードロス削減に貢献しています。地域の資源を大切にし、環境負荷を減らすためにさまざまな取り組みを行っています。

 

木内酒造では2016年よりウイスキー事業に参入し、2020年にこちらの八郷蒸溜所がオープンしました。ツアーでは特別に一部、蒸溜所の製造現場に入って間近で製造の様子を見学することができます。ウイスキー用の巨大な銅製ポットスチルがどんと鎮座する様子や、貯蔵用の木樽がずらりと並ぶ風景は圧巻です。

 

見学の後のお楽しみはもちろん試飲。3種類のウイスキーをまずはストレートでテイスティング。その次に水を少しずつ足すと、あっと驚くほど味わいが変化するからおもしろいです。自分の好みの味を探してみましょう。

 

ちょっと小腹が減ってきたな、という時間でもありますが、ウイスキーのお供には、こんな豪華なシャルキュトリー食べ比べセットが付いてきます。ウイスキーの醪(もろみ)で発酵させたサラミ、プロシュート、コッパ、スモークハム、ビアシンケン、ボルケッタ等々。ハムやソーセージでだしをとったスープ、ウイスキーの酵母で発酵させたというパンも手作りです。もちろんウイスキーとのペアリングも最高。

 

同じ敷地内には「常陸野ハム工房BARRELSMOKE」があり、生ハムやベーコン、ソーセージ等を製造しています。蒸溜所のすぐ近くに養豚場があるそうで、この地域でのびのびと育てられた上質な豚「常陸野ポーク」の飼料には、日の丸ウイスキーの製造過程で出る麦芽粕が使われているのだとか。また、加工の仕上げのスモークには、日の丸ウイスキーを熟成させたオークバレル(樫の木樽)を使い、より奥深い味わいとなっています。

 

ビジターセンターにはショップが併設されており、ここだけの限定ウイスキーが販売されています。ジンやビール、グッズなども販売。先ほど食べて美味しかったハムやソーセージの販売コーナーもあり、ついつい財布の紐が緩んでしまいます。

 

・日の丸ウイスキー 八郷蒸溜所

住所:茨城県石岡市須釜1300

URL:https://hinomaruwhisky.com/

 

 

 

フクロウのイラストが可愛い「常陸野ネストビール」の醸造現場へ

バスに乗って移動し、次に訪ねたのは常陸野ネストビールの額田醸造所。こちらは普段は非公開ですが、ツアーでは特別に見学することができます。

 

常陸野ネストビールが生まれたのは、茨城県那珂市の“鴻巣”という地域。1996年にビール製造を開始し、2007年より、こちらの額田醸造所で製造を行っています。年間約3000キロリットルのビールを造り、その50%は海外へ。なんと世界40カ国以上に輸出されているそう! NYの街角で、このフクロウマークのトラックを見かけることもあるのだとか。世界中で親しまれているビールなのです。

 

写真は仕込み室です。スタッフの方がビール造りについて詳しく説明してくれました(常に清潔な環境が重要で、ビール造りの9割は清掃、なんて話もおもしろかった!)

 

茨城県はかつてビール麦の国内有数の生産地だったそうで、ここでは地元の農家と一緒に、一度は廃れてしまった幻の日本産のビール麦「金子ゴールデン」を復活させました。また近年はホップの生産にも取り組むなど、この土地の魅力を伝えながら、より良いビール造りのために、常に意欲的に新たな挑戦を続けています。バスツアーでも秋の収穫期にはホップの畑を眺められるかも!?

 

実際の製造現場を見学した後に飲むビールは美味しいに決まっています。工場からできたてのフレッシュなビールを、その場でテイスティング!これはもう、至福のひととき。何もいうことはありません。

 

常陸野ネストビール 額田醸造所(ツアー時のみで、通常は非公開)

住所:茨城県那珂市額田南郷字高岡2182

URL:https://hitachino.cc/

 

 

 

「木内酒造」の酒蔵見学の後は、お待ちかねの蕎麦ディナー

最後に訪れたのは本日の大トリ、木内酒造の酒蔵「鴻巣の蔵」です。文政六年(1823年)創業。ビールもウイスキーも、すべてはこの酒蔵が出発点です。建物の大部分は大正時代のものだそうで、老舗らしい趣があります。

 

蔵人さんに酒蔵の中をご案内いただきました。写真に写っているのは、お酒を搾る自動圧搾ろ過機です。アコーディオンのようになっており、両側から圧力を加えて搾ります。搾った液体が日本酒、残った塊が酒粕です。

 

木内酒造は全量純米酒。米と麹と水だけで造られ、余計なものは入っていません。酒米にはこだわっており、美山錦、五百万石、山田錦、ひたち錦等をはじめ、農家との契約栽培で特別につくられた上質な酒米を使っています。

 

水は酒蔵内の井戸から湧き出る地下水です。酒蔵から1kmくらい先の所には酒出(さかいで)という地名があり、昔はそこの井戸から酒が湧き出た、という伝説があるくらい、酒と水に深いつながりのある地域です。

 

見学の後はここでももちろん試飲を。ウイスキー、ビール(バス内では梅酒やジンも!)ともう散々飲んできましたが、ついに日本酒の出番です。ショップの一角に設けられたこの試飲コーナー、味わいがありますね。

 

ショップコーナーには日本酒各種の他に、ビールやウイスキー、グッズやつまみなどもあります。テーブルにリメイクしているのは、お酒を搾るために使われていた古い道具、槽(ふね)の底板だそうです。建物内をよくよく見てみると、かつて酒造りに使われていた道具が、あちこちで上手にインテリアに取り入れられていておもしろいです。

 

そしてツアーはこれで終わりではありません。最後には、酒蔵に併設されたレストラン「蔵+蕎麦な嘉屋」で、日本酒をペアリングできる蕎麦会席の宴が待っていました! 最初に出てきたこのつまみセットのような一皿。自家製厚揚げを大吟醸の酒粕で漬けたものや、クリームチーズを10年以上熟成された自社の味噌で漬けたものなどが並び、酒飲みのツボを完璧に押さえているとしか思えないメニューです。

 

地元の食材をふんだんに使った料理が次々に登場し、お腹もいっぱいになりました。最後に出てくるのはお蕎麦。ビールやウイスキーに使う麦を育てる裏作で蕎麦を育てているそうで、そのおかげで麦も元気に育つのだそう。具沢山のけんちん汁で食べる「つけけんちん蕎麦」は、水戸藩から広まったと伝えられており、茨城県で愛される郷土料理です。

 

木内酒造が今特に注力しているのは日本酒。日本酒の蔵は全国的にも急激に衰退しているのが現状です。一方、近年では海外で注目され、和洋問わずさまざまな料理のペアリングに親しまれつつあります。日本の文化の根幹ともいえる日本酒を、もっとおもしろく、かっこよく盛り上げたい、とのこと。2024年中には、日本酒をメインにしたレストランが敷地内にオープンするそうです。乞うご期待!

 

・木内酒造 鴻巣の蔵

住所:茨城県那珂市鴻巣1257

URL:https://kodawari.cc/

 

「バーバス常陸野」では、酒造りを巡るツアー以外にも、シェフとコラボしたスペシャルな食体験ツアーや、水戸芸術館などアート鑑賞を取り入れたツアーなど、さまざま様々なツアーが予定されています。詳しい情報はHPをチェック! ツアーは事前に要予約です。ぜひバスに乗って、茨城の魅力とともに、さまざまなお酒の世界を楽しんでみてください。

 

・BAR BUS HITACHINO(バーバス常陸野)

URL:https://barbus.hitachino.cc/

※ツアー予約はHPから

 

◎撮影&取材&文/江澤香織

 

◎協力/木内酒造

店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。

MAGAZINE

mina 2024年6月号

COVER STORY

TO MEET THE GOOD SHIRT 私にぴったりのシャツを探しに。芳根京子

  • ◆ふたりでおんなじシャツを着る。
  • ◆これからもずっと着たい「偏愛シャツ」
gototop