ベトナム最後の王朝、グエン朝(1802〜194年)をはじめ、3世紀にわたり3つの王朝の首都が置かれたフエ。ベトナムで初めて世界文化遺産に登録された「フエの建造物群」もあり、ベトナムならではの宮廷文化や宮廷音楽、そして宮廷料理を体感することができる「ベトナムの京都」と称される古都です。今回はベトナムの古都フエで、宮廷文化やローカルフードを満喫する旅をご紹介します。
世界遺産「フエ王宮」でベトナム最後の王朝に想いを馳せる
約130年にわたりベトナム最後の王朝・グエン朝が置かれたことから「グエン朝王宮」とも呼ばれる「フエ王宮」。海へのアクセスが容易な、香江のほとりに戦略的に建設されたベトナムの封建制時代の首都で、世界文化遺産に登録された「フエの建造物群」の代表的な建造物のひとつでもあります。
王宮は東西約642メートル、南北568メートル、高さ6メートルの城壁で囲まれており、城塞内の建造物は、五行、基点、色彩などの観点で配置されています。王宮の南に位置する「午門」、皇帝の即位式などが行われた「太和殿」、北京の紫禁城からヒントを得て建てられた「紫禁城」などが見どころです。2代皇帝のミンマン帝の命により1826年に建設されたベトナム最古の劇場「閲是堂」では、いまでも毎日2回、王宮舞踊音楽を鑑賞することができます。
私が訪れた際には王宮敷地内で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されているベトナム伝統の「雅楽」の演奏を見ることもできました。オーボエの一種「ケン」や、横笛「サオ」などの楽器を用いた雅楽からも、王朝時代の栄華が感じられます。
・フエ王宮
住所:Phu Hau, Thua Thien Hue
https://www.hueworldheritage.org.vn/en-us/
バロック様式を取り入れた豪華絢爛な「カイディン帝廟」
同じく世界遺産「フエの建造物群」に含まれているのが、グエン朝12代皇帝の「カイディン帝廟」です。フランス文化に影響を受けたカイディン帝は、西洋のバロック建築とベトナムの伝統装飾が融合した華やかな陵墓(りょうぼ)を作るよう命じ、約11年もの歳月をかけて1931年に「カイディン帝廟」が建設されました。
グエン王家の墓の中では最も小さいですが、最も高価で新しい墓となっています。壁面の一部には、日本のビール瓶の破片が使われているなど、日本との縁も感じられる帝廟です。
・カイディン帝廟
住所:xã Thủy Bằng huyện Hương Thuỷ, Huế, Thừa Thiên Huế
営業時間:7:00〜17:30
ベトナムの新古典主義建築を代表する「アンディン宮殿」
先述したカイディン帝の離宮として1917年に建てられた宮殿が「アンディン宮殿」です。アンクー川のほとりにある木造建築物で、以前はフンホア宮殿として知られていました。20世紀初頭のベトナムの新古典主義建築を代表する建築物で、こちらもユネスコの世界文化遺産に登録されています。まるでフランスにある宮殿のような見た目で、青い空に映えるレモンイエローの壁面が印象的です。
・アンディン宮殿
住所:179 Phan Đình Phùng, Phú Nhuận, Thành phố Huế
営業時間:7:00〜17:00
花のようにディスプレイされたカラフルな線香に魅せられる「トゥイスアン線香村」
落ち着いた色味の歴史的建造物が多いフエにおいて、ついついシャッターを切りたくなってしまうのが「トゥイスアン線香村」です。フエで何百年も前から知られている最大のお香の村で、線香屋さんが数十メートルに渡って道の両端に並んでいます。どのお店もカラフルな線香を、お花のようにディスプレイしているのが特徴です。お店によっては商品を購入し、カラフルな線香をバックに写真撮影をすることもできます。
また、いくつかの店舗では、線香づくりを体験することもできます。トゥイスアンのお香は、独特の香りと高い品質が特徴。訪れたらぜひお土産にオリジナルの線香を買って帰りましょう。
・トゥイスアン線香村
住所:84 Huyền Trân Công Chúa, Thủy Xuân, Thành phố Huế, Thừa Thiên Huế
ベトナムの皇族気分で、フエの宮廷料理に舌鼓
フエの王朝文化をより深く体感したいなら、やはり欠かせないのがフエの宮廷料理を味わうこと。フエ市内にはグエン朝時代に皇族たちが口にしたという、宮廷料理や宮殿の様子を再現したレストランがいくつもあります。
料理は食材に繊細なカッティングを施し鳳凰に仕立てたパテの「フォン・ホアン・カイ・ヴィ」など、華やかで縁起の良い料理ばかり。ほとんどの料理がスパイシーなタレをお好みでつけて食べるスタイルなので、辛いものが苦手な方でも調整して美味しくいただくことができます。今回訪れた「コン・ザン・スア」では、王朝時代のコスチュームも貸し出しているので、着用して記念撮影をすることもできますよ。
・コン・ザン・スア(Khong Gian Xua)
住所:205 Dien Bien Phu Hue
TEL:+84 234 3836 788
フエの名物ローカル料理「ブンボーフエ」をすする!
宮廷料理と同じくフエの名物グルメとして知られているのが「ブンボーフエ」です。「ブン」はベトナム名物のフォーと同様、米でできた断面の丸いツルッとした中太麺のことで、「ボー」は牛肉という意味。すなわちフエの牛肉麺を指します。
牛肉の旨みが溶け出たスープにツルッとした喉越しで細切れのブン、そして薄切りの牛肉エビと豚肉のピリ辛なつみれ、玉ねぎなどがのっている「ブンボーフエ」。お好みで添えられたハーブや野菜、バナナの葉などをトッピングし、ライムを絞っていただきます。フエの人々は「ブンボーフエ」を朝食や昼食としていただくそう。街のローカルなお店では300円ほどでいただけます。
・Dac san so 1. Bun bo hue
住所:19 Lý Thường Kiệt, Phú Nhuận, Thành phố Huế, Thừa Thiên Huế
TEL:+84-762-615-097
営業時間:5:00〜21:00
上皇・皇后両陛下も味わったベトナムのフランス料理
フランスの植民地だったベトナムには、フランス料理の名店も数多くあります。「アマン」ホテルの創設者であるエイドリアン・ゼッカ氏が手がける5つ星ホテルの「アゼライ・ラ・レジデンス フエ」の中にあるフランス料理店もそのひとつ。2017年に現在の上皇と上皇后両陛下がご宿泊され、こちらのレストランでもお食事を召し上がりました。
料理はオーセンティックなフランス料理をベースとしながらも、蒸し暑いベトナムでも美味しく食べられる油分が少なめで野菜がたっぷりなヘルシーな味わい。ベトナムで進化したフランス料理の味に出会い、ベトナムの歴史に想いを馳せるのもいいでしょう。
・Nhà hàng Le Parfum
住所:5 Lê Lợi, Street, Thành phố Huế, Thừa Thiên Huế 530000 ベトナム
TEL:+84-234-383-7475
https://azerai.com/resorts/azerai-la-residence-hue/dining/
フエの歴史や文化にインスパイアされた「シルクパスグランドフエホテル」
フエ観光をするのに便利なのが、王宮やフエ駅からも徒歩圏内の中心部に位置する「シルクパスグランドフエホテル」です。王朝文化やフランス植民地時代の邸宅などが、ホテルのコンセプトやデザインにインスピレーションを与えています。
朝食ではフエ名物のブンボーフエやバインミーをライブキッチンで作ってくれるほか、ベトナムの名物料理をビュッフェスタイルで味わうことができます。朝食会場でもある「ナム・フォン・レストラン」は、ベトナム最後の女王の名にちなんでつけられおり、フエの伝統料理が名物です。トップ写真の「エビとグリーンマンゴーのサラダ」をはじめ、フエでしか味わえない料理を、ランチやディナーで味わうことができます。
・シルクパスグランドフエホテル
住所:02 Le Loi Street, Hue
TEL:+84 234 397 5555
https://silkpathhotel.com/en/Hue/
アオザイやハスの花が美しい、ベトナム航空に乗って古都フエへ
ベトナム中部のフエは、首都のハノイから南に約700キロメートルの場所に位置します。日本からであれば首都のハノイまで直行便で渡り、そこから国内線に乗り換えてフエへ訪れるのがおすすめです。飛行時間は東京・成田空港からハノイ・ノイバイ空港までが片道約5時間、ハノイ・ノイバイ空港からフエ・フバイ空港までが約1時間〜1時間半ほどとなります。
今回筆者が搭乗したベトナム航空の東京・成田―ハノイ便は、ボーイング787のドリームライナーという機材が採用されています。ビジネスクラスの場合は座席がフルフラットになり、身長163センチメートルの筆者も窮屈さを感じることなく、移動中も横になり快適な睡眠を取ることができました。もちろん、枕やブランケット、スリッパなどのアメニティも完備。食事も「ノリタケ」の器を使ったフルコースでの提供、ベトナム航空オリジナルカクテルを含む豊富なアルコールドリンクもフリーフロー、オリジナルアメニティキット付きなど至れり尽くせりです。
特にビジネスクラスの場合は、空港ラウンジを使用することができるのがありがたかったです。経由地のハノイ空港では、ベトナム航空専用の「ロータスラウンジ」を利用することができ、深夜便でもシャワーを浴び、さっぱりした状態でトランジットすることができました。「ロータスラウンジ」にはベトナム料理をはじめとした豊富な料理とドリンクも揃い、仮眠できるスペースもあります。
ベトナム航空はエコノミークラスでも、2種類から選べる機内食やビールやワインを含むドリンクメニューが含まれ、座席はパーソナルテレビモニター付き(ボーイング 787 ・エアバスA350のみ)、ひとり23キログラムを上限に2個までの無料受託手荷物サービスがあります。機内食や座席指定、受託手荷物が全て有料のLCCとは異なり、安心のフルサービスが魅力です。CAさんの衣装もベトナム伝統のアオザイ、機内食はベトナム料理も選択でき、機体には国花のハスの花が彩られるなど、空の上からベトナム文化を感じられます。
ちなみにフエは、第三の都市ダナンから、車や鉄道で約2〜3時間でアクセスできます。ベトナムのダナンへも東京・成田空港から、ベトナム航空が毎日直行便を運航しているので、ダナン経由でフエを訪れるのもいいでしょう。
・ベトナム航空
https://www.vietnamairlines.com/jp/ja/home
悠久の時を超え、いまなお根付くフエの宮廷文化を感じる優雅な旅を
ベトナムの中でも雅な雰囲気で、首都ハノイや大都会ホーチミンに比べるとゆったりと優雅な時間が流れるフエ。悠久の時を超えていまに伝わるベトナム宮廷文化をぜひ、現地で体感してみてください。
取材協力:ベトナム航空
◎取材&撮影&文/中森りほ
価格は税込です。店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。
記事は取材時(2023年6月23日)時点の情報のため、最新の入国規制などについては各国政府発表の公式情報をご覧ください。