2024.03.29

丹下健三に、黒川紀章。建築とアートの街「広島」探訪【週末“非日常”TRIP】

2023年5月に「G7広島サミット」が開催され、世界的にも注目を集めた「広島」。実は街を歩くと、建築界の巨匠や名だたる芸術家の作品と出会える建築とアートの街でもあります。今回は広島市中心部で、世界的な建築や最新スポットを巡ってきたので詳しくレポートします。

エイドリアン・バーグ《シェフィールド公園1985-86年秋》1985-86.広島市現代美術館

イサム・ノグチの作品も。平和記念公園周辺を散策

丹下健三氏が建築設計を手がけた平和記念公園・広島平和記念資料館をはじめ、著名な建築家たちの作品が点在する「広島」。そもそもなぜ広島なのかというと、その歴史が深く関わります。広島市中心部は1945年に原爆により想像を超える数の建物が全壊・全焼。焼け野原となってしまった広島の復興を目指し、1949年に「広島平和記念都市建設法」が公布・施行され、国を挙げて都市整備が進められました。そして名だたる建築家たちの平和への想いが集結したため、現在の広島では多数の名建築を見ることができます。

 

・広島平和記念資料館

住所:広島県広島市中区中島町1-2
HP:https://hpmmuseum.jp/

 

街には著名な芸術家のアートもありながら、あまりに街に溶け込みすぎて地元民から気づかれていない作品も。平和記念公園近くの「平和大橋」と「西平和大橋」は、彫刻家のイサム・ノグチ氏が欄干をデザインしています。

 

・西平和大橋

住所:広島市中区中島町1番(平和記念公園南西側)
HP:https://peace-tourism.com/spot/entry-82.html

 

日本とアメリカというふたつのふるさとを持つイサム・ノグチ氏ならではの想いが込められており、平和大橋の欄干は「東から昇る太陽」を表現。1952年、まだまだ復興途中の広島の街で誕生した平和大橋は、きっと人々の心を勇気づけたに違いありません。

 

・平和大橋

住所:広島市中区中島町1番 (平和記念公園南東側)
HP:https://peace-tourism.com/spot/entry-81.html

 

平和大橋と西平和大橋の間に位置し、10基の門が連なるパブリックアート《平和の門》は被爆60周年の2005年にフランス人の芸術家クララ・アルテール氏と建築家ジャン=ミシェル・ヴィルモット氏が製作したもの。

49の言語で「平和」の文字が造り手によって刻まれており、日本人としては、やはり漢字の「平和」の文字を見ると、心に響くものがあります。

 

・平和の門

住所:広島市中区中島町 平和大通り緑地部分
HP:https://peace-tourism.com/spot/entry-77.html

 

明るく開放的。リニューアルした「広島市現代美術館」

比治山公園「平和の丘」に建つ「広島市現代美術館」、通称「ゲンビ」は国立新美術館なども手がけた建築家・黒川紀章氏の代表的建築作品。エントランスがある円形の「アプローチプラザ」はあえて欠けたようなデザインとなっていて、その欠けた場所は原爆ドームのある爆心地を向いています。

写真提供:広島市現代美術館

広島市現代美術館を背に爆心地の方向を見つめると、所蔵作品で最も大きなヘンリー・ムーア氏の作品《アーチ》を発見。ブロンズで造られた重さ約6トンものアーチ(門)で、たやすくくぐれる大きさです。ムーアの広場は春には桜も咲き、市民のお花見スポットとしても親しまれています。

常設の野外彫刻のほか、コレクション展では約1,700点の所蔵作品の中から、テーマに沿った作品を展示。またゲストアーティストを招いた企画を展開しています。2024年4月7日(日)までは、「コレクション展 2023-Ⅱ コレクション・ハイライト+ コレクション・リレーションズ[ゲストアーティスト:小森はるか+瀬尾夏美]」が開催中。エイドリアン・バーグ氏の《シェフィールド公園1985-86年秋》や若林奮氏の《DOME》《水鏡》など、一見の価値がある作品がそろっています。

広島市現代美術館は建物自体も作品なので、館内でも黒川氏の意匠を楽しむことができます。特に多彩な形で採光する「窓」が特徴的。至るところでさまざまな形の窓がはめ込まれ、床材には白い大理石も使われているため、館内はとても明るい空間となっています。

広島市現代美術館は1989年に開館しましたが、2023年3月に改修工事を経てリニューアルオープンし、新しいカフェ「KAZE」が誕生しました。サンドイッチやスイーツなどを提供しており、おすすめは「わたしの世界一のサラダ(2,900円)」。店主が「世界一美味しい」と思う中国地方の食材が詰まったサラダです。広島県三原「梶谷農園」のハーブはとても香り高く、ジューシーな山口県産鶏のグリルも絶品。写真は2〜3人用で、1人用(2,340円)もあります。

 

・広島市現代美術館

住所:広島市南区比治山公園1-1
HP:https://www.hiroshima-moca.jp/

 

2023年9月オープン。話題の「猫屋町ビルヂング」へ

巨匠が手がけた建築作品だけではなく、進化を続けている建築とアートの街「広島」。今、広島女子から注目を集めている最新スポットが「猫屋町ビルヂング」です。建築家の谷尻誠氏と吉田愛氏が率いる広島・東京の建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」による、約50年前のビルを改修したオフィス兼商業施設となっています。

「昔と今の共存」をテーマに改修した館内は、歴史を感じるコンクリートの階段やモダンなインテリアが混じり合うおしゃれな空間。1階は4店舗が集まる食のフロアで、各店舗のカウンターや共用のテーブルに座って食事を楽しめます。

注目は「社員+社会の食堂」をコンセプトにした「社食堂」。館内の3階にSUPPOSE DESIGN OFFICEの仕事場があり、そこで働く社員はもちろんのこと、誰でも利用できるのが特徴です。東京のオフィスにも社食堂はありますが、広島のみで提供しているのが「ねこやプレート(1,320円)」。日替わりのメイン2種・自家製ドレッシングのサラダ・お惣菜・ミニスープ・ご飯がワンプレートになっていて、心がほっこり温まるような美味しさです。

デザートは吉田愛氏がプロデュースする「yacone」のクラフトアイスクリームで決まりです。広島市佐伯区湯来町「砂谷牧場」のパスチャライズド牛乳など広島県の食材を使っており、定番のほか旬のフレーバーを選ぶことができます。この日は8種類から「文旦クリームチーズ(500円)」と「チョコラズベリー(500円)」をチョイス。文旦クリームチーズは仕上げに文旦ソースやペッパーをあしらった大人なアイスで、柑橘ならではの苦味とクリームチーズの甘みが相性抜群でした!

 

・猫屋町ビルヂング

住所:広島市中区猫屋町8-17
HP:https://www.nekoya-cho.jp/

 

歴史深い庭園と、ダリの作品を鑑賞できる美術館

広島では、G7広島サミットで各国の首脳やパートナーが訪れた場所も話題となっています。400年以上の歴史を持つ「縮景園」はインドネシア共和国大統領夫人や英国首相夫人などが訪れ、広島になじみある鯉(カープ)の餌やりを楽しまれた場所。広島藩主・浅野長晟が別邸の庭園として築成し、山・谷・川・海など自然風景を表現した庭となっており、ランドスケープデザインとしても見応えがあります。

 

・縮景園

住所:広島市中区上幟町2-11
HP:https://shukkeien.jp/

 

アート好きの人には、縮景園に隣接する「広島県立美術館」もイチ押し。広島県ゆかりの美術作品、日本とアジアの工芸作品、1920〜30年代の美術作品に焦点を当てた約5,200点の所蔵作品からピックアップし、テーマ性のある所蔵作品展を年に4回開催しています。

中には横幅約5mものサルバドール・ダリの作品《ヴィーナスの夢》や、世界に6体しか確認されていない《伊万里柿右衛門様式色絵馬》など貴重な作品も。2024年4月13日(土)~ 6月2日(日)はアンリ・モレ 《ポン=タヴァンの風景》 などのフランス・カンペール美術館のコレクションを中心とする展覧会「ブルターニュの光と風」を開催予定です。

 

・広島県立美術館

住所:広島市中区上幟町2-22
HP:https://www.hpam.jp/museum/

 

広島ならではの銘菓と日本酒をお土産に

広島を訪れたら、「広島駅」でお土産を買うのをお忘れなく。広島駅は再開発が進んでおり、土産店が豊富にそろっています。今回は地元の人に勧めてもらった旭鳳(きょくほう)酒造「八反錦 泰平(720mL 1,485円)」と、もち粉の生地で餡を包んだやまだ屋「桐葉菓(とうようか)(3個入り 580円)」をGET。広島は酒どころでもあり、広島県産米「八反錦」を使った旭鳳酒造の透明感あふれる日本酒は旅を思い起こす美味しさでした。

 

街に溶け込むように、ストーリーを持つ建築やアート作品が点在している「広島」。今回紹介したスポットはひろしま観光ループバス「ひろしま めいぷる~ぷ」で巡ることができるところばかりで、1泊2日の旅行で楽しめます。観光後は平和への想いが高まるとともに、多彩なデザインに感性が刺激されました。ポカポカ暖かな春の陽気を感じながら、建築とアートの街を歩く旅へと出かけてみては?

 

取材協力:広島市

 

◎取材&撮影&文/小浜みゆ

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 STORY of WEEKEND
HANDSOME JACKET 奈緒 秋の終わりから、メンズジャケットを羽織って。

  • ◆この秋冬は「ジャケット」さえあれば。
  • ◆カジュアル好きのふたりが着たい「週末テーラード」
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