2021.12.23

わざわざ行きたい「発見のある本屋」さん〈滋賀・六月の水曜日〉

訪れると、必ずと言って良いほど、新たな出会いや発見がある本屋さん。今回は滋賀にある〈六月の水曜日〉を紹介します。他の店にはない、仕掛けや選書のこだわりに注目です。

 

 

〈発見その1〉看板もなく、あえて「隠れている」お店

 滋賀県の彦根市と八日市に店を構える〈六月の水曜日〉。店主の宇野さんは、自分が生まれ育った地元を活性化したいという想いからこの土地にお店を開いたそうです。

 彦根市にある店舗は、外から覗いても、一体どこにお店があるのかわからない仕組みになっていることに驚き。店前には絵本の専門店チロル書房の看板しか見当たらない……!

 

「〈六月の水曜日〉は、チロル書房の奥にあるんです。店の存在を知るには、Twitterや雑誌、地域のフリーペーパーで発見するしかありません。“この不思議なお店ってなんだろう”というちょっと気になる存在でいることで、本を手に取ってもらうきっかけになればと思いました」

 

 お店自体を隠してしまうという思い切った施策は、より本に、そして〈六月の水曜日〉に興味を持ってもらうためのものでした。“発見する楽しみ”と、“知る人ぞ知る特別感”をぜひ味わって。

 

 

〈発見その2〉“モノ”としてずっと残しておきたくなる選書

 一般的な書店に比べて、取り扱っている本の数が少ないのも特徴。1つひとつの本の顔(表紙)が、お客さんになるべく見えるようにしたいという理由からあえて数を絞っているそうです。

 

「装丁やデザイン、紙や素材から温度が感じられるような本を揃えているので、お客さんには“ジャケ買い”のような感覚で購入して欲しいと思っています。本のジャンルにこだわりはありません。置いてある本は、ただ僕が“モノとしてずっと残しておきたいと思える本”です」

 

「本自体が持つ空気感を信じて買って欲しい」と語る宇野さん。装丁やデザインはその本の内容を表しているもの。最初に見て感じた期待から購入することは、本を作っている人を信じることにも繋がるんですね。

 

 

〈発見その3〉本に合わせたオリジナルブレンドが手に入る

 そして、もうひとつのこだわりである「珈琲」。宇野さんが本を読んで感じたことやイメージしたことを「オリジナルのブレンド」で表現していて、「本と珈琲」をセットで販売しているんです。

(購入はオンラインショップのみ。試飲は八日市の店舗にて可能)

 

「面白いや楽しいなどの感情もストレートに表しますが、読んだ時にすっきりしない本も、そのままのイメージでブレンドをします。多分まずい珈琲になると思うんですが(笑)。その本と一緒だと、“なるほど、確かに”ってなる本と珈琲が生み出す相性の良さを楽しんで欲しいです」

 

 宇野さんの感想を味わいなら、自分のイメージと重ねあわせてみる。珈琲を通じてのコミュニケーション。「本と珈琲」の、新しい楽しみ方です。

 

 

〈六月の水曜日〉屋号の由来はある小説

 カウンターには、1冊の小説が置かれています。タイトルは非公開! 実は、屋号である〈六月の水曜日〉は、その小説の一節から引用されたもの。お店で手に取った人のみ知ることができるんです。

 

「“六月”って梅雨と呼ばれることが多く、しかも雨が降るしあまり好きじゃない人も多い。そして水曜日は1週間の中で、始まりでもなければ週末でもない、なんとも微妙な位置にある曜日。だから“六月の水曜日”って一年間の中で確実に重要度が低いんですよね。だけどカレンダーには必要。僕のお店も、多くの人には必要ではないかもしれないけど“ここにあって、人が来る”。そんなスタンスが似ているなと思って名付けました」

 

 

 お店の場所だけではなく、「屋号の由来」まで隠してしまう。そうであればあるほど、わざわざでも行きたくなるし、なんとか見つけたくなるし、そこにある本が読みたくなる。

 気になる人は、ぜひ頑張って、隠れた名店、〈六月の水曜日〉を見つけてみて。

 

 

SHOP INFO

住所:滋賀県彦根市銀座町5-3
営業時間:11:00〜18:00
営業:土曜・日曜
HP:https://rokugatsu.thebase.in

 

▶︎店主・宇野 爵さん

地元の靴屋で9年間勤務した後に(京都の)本屋に転身。業界のことを学ぶため大手書店にて3年半に渡り勤務し、退職後に地元である滋賀県にて六月の水曜日を開店。靴屋で経験した小売の知識を活かしながら、ダブルワークで経営を続けている。

 

 

 

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あの街、冬さんぽ。/
清野菜名

  • ◆行くなら、やっぱり温泉宿。
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