2026.03.27

「いつもの街で」 山田杏奈 詩・文月悠光

春は、引っ越しや新生活が始まる季節です。

山田杏奈さんが出演するファッションストーリーに寄せて、街を離れる前の気持ちや、身の回りにあるものがふと記憶を引き戻す感覚を、詩人・文月悠光さんに綴っていただきました。

何気なく使ってきた服や雑誌、そばにあったものたちが、自分の歩みと重なって見えてくる一編です。

 

 

かつての春はもう遠くて、

止まりがちな手が思い出す。

 

もうすぐこの街を離れるというのに、

わたしはまだここが恋しい。

 

思いはまとまらないけれど、

懐かしさに古い雑誌をめくれば

 

あのころ憧れた暮らしに

また少し近づいた気がする。

 

 

 

次の街に呼ばれているのは、

実はわたしだけじゃない。

 

忘れかけていた紙焼き写真、

柔らかくなったデニムのパンツ、

掌に馴染むマグカップ。

 

 

知らずに抱えていたものたちが

ふたたび照らされて 包まれて

 

わたしの一部として運ばれていく。

 

 

 

すべてがはじめてだった道、

今は迷いなく歩いていける。

 

この街はわたしの歩みを知っている。

 

そして、このさきを見つめている。

 

いつもの街で過ごす最後の一日、

この位置をいつまでも

抱きしめていたい。

 

 

 

 

 

 

 

Photo / Tamura Masahiro (FREAKS) Styling / Murata Aimi Hair & Make-up / Yamada Daisuke (Cake.)

 

 

2026年mina2・3月合併号(2026年1月20日発売)より

記事に掲載されている情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります

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NEW LIFE, NEW GOODIES 齋藤飛鳥
東京下町、いいモノ探し。

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