2025.10.07

温泉だらけの街、別府で個性豊かな温泉文化を体験してきた!【週末“非日常”TRIP】

日本一の「おんせん県」である、大分県。源泉数・湧出量ともに全国第1位を誇ります。その中でも特に代表的な温泉地といえば、別府です。今回は、別府にある星野リゾート温泉施設「界 別府」のスタッフさんたちにご案内いただき、地元のおすすめスポットをめぐってきました。

 

 

 

大分空港はすでに温泉だった

東京から大分への一番早いアクセスは飛行機。大分空港に降り立つと、なんとキティちゃんがお出迎え!「大分ハローキティ空港」になっていました。

 

大分県とサンリオエンターテイメントが「大阪・関西万博」にあわせて展開する特別なキャンペーン。空港内のあちこちにサンリオのキャラクターが散りばめられています。期間は万博開催中の2025年10月13日までの限定。

 

そして大分空港の国内線到着ロビーには、足湯があります。総ヒノキの湯船に、別府から湯を直送した源泉掛け流しという本格派。到着から市内へ向かう合間にちょっとひと息でも、出発前に最後の憩いにも、気軽に無料で利用できます。空港オリジナルタオルも販売しているので、お土産にどうぞ。

 

 

温泉・入浴研究の第一人者、早坂信哉教授に温泉を学ぶ

さて、別府の温泉に入る前に、温泉や入浴についてきちんと学んでおきましょう。今回は特別に、温泉・入浴について長年医学的に調査を続けている、医師で研究者の早坂信哉教授に、正しい温泉の入り方や別府温泉の楽しみ方を学びました(※今回だけの特別な講座で、通常はおこなわれません)。

 

早坂先生は、東北地方で地域医療をおこなっていたとき、高齢者の入浴サービスに関わったことをきっかけに、入浴に関して医学的な研究があまりおこなわれていないことに気づき、調査を始めたそう。以来25年以上、入浴や温泉、サウナ、岩盤浴などについて研究を続けています。

 

早坂先生が一番に伝えたい、健康になる基本の入浴法は「ぬるめの湯船で、汗ばんだら湯船から出る。欲張らないこと」(40℃の湯で10分全身浴が理想)とのこと。温泉地に行くと、ついつい長湯したり、1日に何度も温泉に入ったりしがちですが、無理して欲張るのはかえって体に負担をかけてしまうそうです。

 

温泉・入浴の健康効果はたくさんあるのですが、体が温まることによる血流改善や自律神経の調整、浮力により筋肉が休まり、水圧によるむくみ改善、体の清浄作用、蒸気で鼻や気管を潤す作用など。さらに温泉は温熱作用がより強いことが多く、保湿、殺菌、温泉成分の吸収による作用など、さまざまな効果があります。温泉利用後に心身が良い変化をもたらすことも先生の研究データで解析されていました。

 

先生曰く、ただ温泉に浸かるだけでなく、その土地の観光や運動、食事など、さまざまなアクティビティに参加することで、より良い心身の影響が出る結果を得られたとのこと。旅を積極的に楽しむことが健康にとっても大事なんですね!

 

 

 

ジモ泉のひとつ、「竹瓦温泉」で砂湯に入ってみよう

別府には、2800以上の源泉があると言われ、毎分10万リットル以上の豊富な噴出量は世界的にもトップクラスです。多様な泉質があることも大きな特徴で、全部で10種類ある泉質のうち7種類が別府内に確認されています。質、量ともにこれほど充実している温泉地は他に類をみません。

 

別府での温泉の楽しみ方のひとつが「ジモ泉」めぐり。ジモ泉とは、地元にある共同浴場のこと。地元の人々が日常に使う浴場を、親しみを込めてそう呼んでいます。別府は街中に銭湯のような小さな温泉が無数に散らばっており、街の風物詩となっています。

 

今回訪ねたのはジモ泉の中でも歴史の古い、竹瓦温泉です。この建物にまず圧倒される! 明治12年(1879年)に創設され、現在の建物は昭和13年(1938)に建設。唐破風造(からはふづくり)の豪華な屋根は、別府のシンボルとも言える存在です。昭和の風情を漂わせる広い湯上がりスペースも魅力。ここでは温泉に入るのも良いですが、名物である一風変わった「砂湯」に入ってみました。

 

専用の浴衣を着て、砂の上に横たわると、砂かけスタッフさんが温泉で温まった砂をどんどんかけてくれます。だんだんずっしり重みがかかり、砂のじんわりした熱が体に伝わってきて、汗が噴出してきます。15分も入れば汗だく。砂湯から上がった後は、シャワーを浴びて汗と砂を落とします。独特の砂の熱で体の芯まで温まり、日頃の疲れが取れてスッキリした感じがしました。

 

 

竹瓦温泉

住所:大分県別府市元町16-23

HP:https://www.takegawara-onsen.com/

 

 

 

鉄輪温泉で地獄蒸し料理を堪能

砂湯で体力を使ったせいか(?)お腹が空いてきました。では別府市の中でも特に源泉が集中している鉄輪(かんなわ)温泉エリアへ。鉄輪温泉は別府の繁華街からは少し離れていますが、昔ながらの温泉文化が残る、味わい深いエリアです。ここで是非とも体験したいのが、温泉の蒸気で食材を調理する「地獄蒸し」。江戸時代から伝わっている調理法です。

 

海鮮や豊後牛、牡蠣やアサリバター、餃子など、さまざまなメニューの中から好きなものを選び、食材の入ったカゴを釜場に持って行くと、スタッフさんのサポートで、蒸し体験ができます。もくもくと湯気の立つ釜は100℃を超える熱々の蒸気なので要注意。耐熱用の手袋をして、せーので釜の中に入れます。あとは待つだけ。近くには飲泉場があるので、温泉を味見してみるのもいいでしょう。

 

おすすめとのことで、「別府温泉ぶたまん」も蒸してみました。温泉で蒸すという非常にシンプルな調理法なのに、なぜこんなにも美味しいのでしょう。カゴいっぱいに入っていた肉や野菜をあっという間にペロリ。テーブルにはポン酢、塩、そして頼めばさまざまな調味料が用意されていますが、まずは塩で食べるのが最高に美味しかったです!

 

 

鉄輪地獄蒸し工房

住所:大分県別府市風呂本5組

HP:https://jigokumushi.com/

 

 

 

「地獄温泉ミュージアム」で温泉の歴史や文化を知る

別府の温泉のことをもっとよく知りたい、と次に訪ねたのは「地獄温泉ミュージアム」です。別府という特殊な地形からどのように温泉ができあがったのか、鉄輪温泉が“地獄”と呼ばれた歴史など、温泉にまつわるこの土地の物語を、ユニークな展示方法で紹介しています。

 

展示の途中にある「湯けむりスタンプラリー」は、迷路のような不思議な空間を辿り、専用のカードにスタンプを押して集めると、自分だけのオリジナルな湯けむり風景ができあがるという参加型のアトラクション。迷路を彷徨いながら、自らが雨粒から温泉に変わっていく過程を体感し、温泉の知識も学べるようになっています。

 

企画展示ギャラリーでは、「温泉染研究所」による作品展が開催中(2026年3月31日まで)。アトリエのような不思議なディスプレイで、さまざまな温泉水で染めた約10年間の実験の成果や、リアルタイムに作品制作の様子も見学できて、かなりの見応えがありました。

館内エントランスにはお土産コーナーやカフェもあるので、さまざまな楽しみ方ができるミュージアムです。

 

 

地獄温泉ミュージアム

住所:大分県別府市鉄輪321-1

HP:https://jigoku-museum.com/

 

 

 

薬草の香りに癒やされる、「鉄輪むし湯」へ

最後に訪ねたのは「鉄輪蒸し湯」。鎌倉時代の建治2年(1276)に一遍上人(いっぺんしょうにん)によって創設された、との記述があり、非常に古い温泉であることがわかります。

 

ここもまた独特の温泉であり、石菖(せきしょう)という薬草を使った蒸し湯です。時間の都合で入浴はできなかったのですが、見学だけさせてもらいました。

 

温泉の蒸気で温められた8畳ほどの石室があり(写真手前の石で積まれた建物の中)、人がやっと通れるくらいの小さな四角い木の扉を開けると、中は薄暗い部屋の床に、石菖がたっぷり敷き詰められています。専用の着物を着てそこに横たわると、石菖の香りに包まれながら、じんわり体が温まるという仕組み。なんとも気持ち良さそう。

 

蒸し湯は日本古来の伝統的な入浴スタイルで、鎌倉時代からおこなわれていたとか。昔の温泉は湯船に入るのではなく、いわゆるサウナのように蒸気に蒸されていたんですね。

 

石菖の葉を見せていただきました。清流沿いにしか群生しないショウブの仲間の薬草です。清々しい清涼感のあるいい香りで、和のハーブといった感じ。そういえば、5月5日の端午の節句には菖蒲湯に入る風習があるけれど、何か関係あるのでしょうか。どちらにしてもリラックスできて、体にはよさそうです。

施設内には無料で気軽に入れる「足蒸し」もあります。木箱の中に足を入れるとホカホカ温まって、冷え性に効きそう。こちらも気持ち良い体験でした。

 

 

鉄輪むし湯

住所:大分県別府市鉄輪上1

TEL:0977-67-3880

 

 

 

「界 別府」でリラックスした温泉滞在を

今回泊まったのは、別府湾を眼下に見下ろす宿泊施設「界 別府」です。建物の設計はなんと建築家の隈 研吾さん。入口からエレベーターを上がり、扉が開くと目の前にはいきなりバーンと広がる青い海と空。天井からは和紙の灯りが優しく瞬き、湯桶をずらりと並べたオブジェから温泉がホカホカと滴る、印象的なスペース「湯の広場」が登場します。海を見下ろす位置には足湯もあり、抜群の眺めです。

 

客室はすべてオーシャンビュー。別府湾に面した、1枚の絵のような全面ガラスのピクチャーウィンドウです。時間によって刻々と変わっていく風景をただ眺めているだけでも楽しい。頑張って早起きすると、朝日が昇る絶景を満喫することができます。客室の温泉露天風呂も同じ方向に面しているので、海を眺めながらの入浴が楽しめます。

 

大浴場は、四季折々の草花を楽しめる庭園の露天風呂と、「あつ湯」「ぬる湯」のふたつを備えた内風呂があります。泉質は、ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉。肌を滑らかにする美肌効果があり、塩分が体を温めるので冷え性にもよさそうです。ちなみに別府をはじめとする界ブランドの温泉は、すべて早坂先生が監修に関わっています。

 

夕食には大分の素材をふんだんに使った「豊後鍋とりゅうきゅうの会席」を楽しみました。そしてそれだけでは終わりません。ここのコンセプトは「ドラマティック温泉街」。別府の街は夜の飲み歩き、食べ歩きが楽しい街でもあり、その雰囲気を演出する、楽しい催しが多々。

 

夜は「湯の広場」がガラリと表情を変えます。昔懐かしいスマートボールや、別府の各温泉地「別府八湯」をイメージした輪投げなどが夜店のように並び、レトロな遊びを体験できます。さらにクライマックスは、温泉文化を表現したご当地楽「湯治ジャグバンド」!

 

法被に身を包んだスタッフさんたちが、湯桶と温泉の湯を楽器に見立てて、愉快な音楽を奏でます。別府港が開港した昭和の初め頃は、流しのギター弾きやオールディーズバンドなどが街のあちこちで演奏し、湯治客を楽しませていたそう。そんな日常に音楽を楽しむ別府の文化にちなんで、毎夜演奏しています。

 

「界 別府」では、2025年12月1日〜2026年11月30日の期間「別府レトロ湯めぐり旅」を販売。このプランでは、ジモ泉を楽しむための正しい入浴方法を温泉に精通するスタッフから学び、入浴に欠かせない道具のセット「ジモ泉のおとも」を持って、別府のレトロな町並みを散策しながら、いざジモ泉へGO! というもの。湯上がりには地元のクラフトビールやアイスバーも用意されていて、ジモ泉をとことん満喫できるプランです。

 

 

界 別府

住所:大分県別府市北浜2-14-29

HP:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaibeppu/

 

 

 

ひたすら温泉三昧に過ごした別府。帰る頃には何となく、前より体が軽やかで、元気になっているような気がしました。秋から冬のシーズンは特に、温泉が恋しい季節です。ぜひ別府を訪ねてみてください。

 

 

 

Photo & Text  / Ezawa Kaori

協力/界 別府

 

 

店舗情報、商品情報は取材時のもので、記事をご覧になったタイミングで変更となっている可能性があります。

 

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【2025年11月号】CONTENTS/特集:UNIQLO 表紙:夏帆

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STORY of WEEKEND
THE BASIC of BASICS 夏帆
定番を楽しむ、銀座の週末。

  • ◆EASY to WEAR. EASIER TOGETHER.おでかけする日も、こもる日も。ユニクロのメンズニットがちょうどいい。
  • ◆The evolution of HEATTECH continues. 世界中を温め続けるインナーに今年もお世話になります!ヒートテックのこと
  • ◆UNIQLO’s CULT CLASSICS! 実は売れてる、隠れ名品を発掘
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