ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロの長編小説デビュー作『遠い山なみの光』が明日公開。1950年代の長崎と1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていくヒューマンミステリーです。
1950年代の長崎に暮らす主人公・悦子を演じた広瀬すずさん、悦子の夫で傷痍軍人の二郎を演じた松下洸平さんに作品への思いについてインタビュー。また、プライベートな“オフの過ごし方”についてもお話を伺いました。
−−作品の見どころを教えてください。
広瀬:『遠い山なみの光』という作品はいろんな糸が複雑に絡まっていて、脚本を読んでも、悦子という女性をどう演じたらいいのかつかみ切れなくて。だからラストの展開などは考えず、戦後間もない1950年代の長崎で夫の二郎さんと暮らす悦子を素直に演じてみようと思ってやっていました。
松下:僕が演じた二郎は戦争で心身ともに傷を負った男性で、台本からはいわゆる昭和の九州男児という印象を受けたのですが、石川監督が描いていた人物像はもう少し柔らかいイメージで。現場で何度もテイクを重ねながら、いい塩梅を探っていきました。
広瀬:松下さんとは今回が初共演で。
松下:でも、プライベートでは面識があったから、現場で会うと逆に照れ臭いというか、「女優さんだ!」と思って。
広瀬:わかる(笑)。でも、人柄を知っている分、何をやっても受け止めてくれるだろうという安心感があり、夫婦の関係性もすぐに築けた気がします。
松下:印象に残っているのは、戦争で指を失った二郎が、悦子にネクタイを締めてもらう場面。男尊女卑の時代のなかで、奥さんに頼らざるを得ない絶妙なパワーバランスの描き方が見事だなと思ったんですが、広瀬さんが結ぶと非常に短くなっちゃって(笑)。
広瀬:入園式の子どものネクタイみたいな長さで(笑)。大苦戦でした。
松下:難しいよね。ただ、劇中、悦子がきれいにオムレツを焼くシーンでも完璧につくっているのを見ていたから、ネクタイが結べないのは意外だった。
広瀬:ふたりのシーンでは、二郎さんのお手伝いをしたり、動きながら台詞を言うことが多くて。しかも、ちょっとシビアな内容なのに、テンションは重くならないように淡々と話す。言動がきれいに整っていない分、難しかった。
松下:そうなんだよね。でも、今作では、広瀬さんの集中力や表現力の高さを間近で感じることができ、改めて、いい経験をさせてもらったなと思いますね。
−−気になるおふたりの”オフ”について。オフはどのように過ごされてますか。
広瀬:オフは極力、家にいたいタイプなので、休みの前日の夜に友だちとごはんに行き、翌日はずっと家で過ごす。一日中、テレビ三昧です(笑)。
松下:テレビ好きよねー(笑)。僕はテレビをつけない日もあったりするかな。
広瀬:信じられない。私は朝から寝るギリギリまでテレビをつけているから。
松下:まえに恋愛リアリティーショーをおすすめしてくれたよね。
広瀬:うん。大好きなので。恋愛リアリティーショーは大号泣しながら、夜な夜な見ちゃう(笑)。あと、オフに夜な夜な見ちゃう(笑)。あと、オフにやることといったら掃除ぐらい。
松下:僕もオフが一日だったら家にいて、掃除や家事で終わっちゃうかも。家事は好きなんだけどね。
広瀬:何が一番好き?
松下:洗濯! ドラム式の洗濯機は中が見えるから、携帯のライトで照らして、回ってる様子をずっと見てる。
広瀬:それ、幼稚園児と一緒(笑)。
松下:アハハ。見ない? きれいになっていくさまを見るのが好きなんだよね。
広瀬:ちゃんと自炊もしてそう。
松下:最低限は。テレビに夢中になってるとき、食事はどうするの?
広瀬:出前を頼んだり、夏は、そうめんかうどんか蕎麦を茹でて食べる。完全に手抜きです(笑)。
松下:僕はこの間、友だちを呼んでタコスパーティをしたんだけど、市販の生地にお肉や野菜を乗せるだけだから楽ちんだし、美味しくて、楽しかったよ。
広瀬:呼ばれてないんですけど(笑)。
松下:アハハ。今度来てよ、タコパ! うん? タコパって言い方は違うか。
広瀬:たこ焼きになっちゃうね(笑)。でも食べたい。タコパしたい!
松下:料理をしてると、食器も気になるんだよね。この間は、欠けてしまった器の金継ぎをしてきた。楽しいよ。
広瀬:金継ぎ、やってみたい! 本当に私とは真逆の生活を送ってるね(笑)。
PROFILE
ひろせ・すず●1998年6月19日生まれ、静岡県出身。近作に映画『ゆきてかへらぬ』、『片思い世界』などがあり、映画『宝島』と『汝、星のごとく』の2本の公開が控える。
まつした・こうへい●1987年3月6日 生まれ、東京都出身。主演作のSPドラマ『放課後カルテ2025秋』が9月に放送予定。来年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』にも出演。音楽番組『with MUSIC』のMCも務めるなど幅広く活躍。
MOVIE
『遠い山なみの光』
戦後の長崎から渡英した悦子は、ずっと口を閉ざしてきた過去の記憶を娘に語り始める……。1950年代の長崎と1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていくヒューマンミステリー。
9月5日(金)TOHO シネマズ日比谷他 全国ロードショー
出演:広瀬すず 二階堂ふみ 吉田 羊 松下洸平 / 三浦友和
配給:ギャガ
©2025 A Pale View of Hills Film Partners
(松下さん分)スーツ/TAGLIATORE(ESTNATION) その他/スタイリスト私物
◎Photo / Yamada Sayuri ◎Styling / Kashima Shohei(W), Marumoto Tatsuhiko(Matsushita Kohei) ◎Hair & Make-up / Ozawa Mai (mod’s hair / Hirose Suzu), KUBOKI(aosora / Matsushita Kohei) ◎text / Sekikawa Naoko ◎Design / Hike Naomi
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