インカ帝国の中心として栄えた天空都市の「マチュピチュ」や「ナスカの地上絵」など、一生に一度は訪れたい世界遺産が13もそろうペルー。今回、ペルー貿易観光投資庁主催のメディアツアーに参加し、世界遺産を巡りながら、今世界で注目度が高まっているペルー料理も味わってきました。
世界遺産、美食にあふれるペルー
日本にとって地球の裏側、はるか南米大陸の西部に位置するペルー。古代インカ帝国の謎と壮大な自然、そして世界を魅了する美食が息づいています。その国土は日本の約3.4倍。太平洋岸の砂漠地帯、アンデス山脈が連なる山岳地帯、そして広大なアマゾン熱帯雨林地帯と、多様な生態系が広がっています。
近年では「美食の国」としても世界的な評価を確立しており、「ワールド・トラベル・アワード」では「世界最高の美食目的地」に通算12回も選出されるほどの実力です。さらに「世界のベストレストラン50」では、2023年にリマのレストラン「セントラル」が世界1位に輝き、2025年版ではリマのニッケイ料理店「マイド」が1位にランクインするなど、世界の美食家たちを魅了し続けています。
セスナ機で空から謎に迫る「ナスカの地上絵」
日本からペルーへは、アメリカの都市を経由して首都リマへ入るのが一般的。まずはリマの南にある「ナスカの地上絵」を目指します。今回、リマから車で約4時間の場所にあるピスコという街へ行き、そこからセスナ機に乗って空から「ナスカの地上絵」を見学しました。
紀元前100年ごろから紀元後300年ごろにかけて、古代ナスカ文明の人々によって描かれたとされる「ナスカの地上絵」。ハチドリやサル、クモといった動植物から幾何学模様まで、多岐にわたります。
何のために、そしてどのようにしてこれほど巨大な絵を描いたのか、その多くは未だ謎に包まれています。
セスナ機の窓から眺める巨大な絵は、まるで古代人からの壮大なメッセージのよう。近年では山形大学の研究チームがAI技術を活用し、数百点もの新たな地上絵を発見するなど、その謎は尽きることがありません。
・ナスカの地上絵
公式HP:https://www.peru.travel/jp/attractions/nasca-lines
イカでワインと国民酒ピスコを堪能
ナスカへの拠点となるイカ地方は、ペルーを代表するお酒「ピスコ」の一大生産地です。ピスコとは街の名前でもありますが、ペルーならではのブドウ品種で造られる蒸留酒も指します。
ぜひ味わいたいのが、ピスコをベースにした国民的カクテル「ピスコサワー」。ピスコにライムジュース、シロップ、そして卵白を加えてシェイクしたカクテルで、爽やかな酸味とクリーミーな口当たりが特徴です。
旅の途中、南米最古とも言われるワイナリー「タンボ・デ・タカマ」に立ち寄り、ワインとピスコのテイスティングを楽しみました。
ワイナリー内のレストランメニューには、ペルーの名物料理が並びます。牛肉の細切り、タマネギ、トマトを炒めて醤油で味付けした「ロモ・サルタード」、豆を混ぜ込んだご飯をフライパンで大きなオムレツのように焼き上げた「タクタク」などは、日本人の舌にも合う味わいでした。
・タンボ・デ・タカマ
住所:Cam. Real 390, Ica 11004
URL:https://www.tambodetacama.com/
宿泊は、ブドウ畑に囲まれた「ホテル・ヴィニャス・ケイローロ」へ。ワインの試飲やぶどう畑のツアーなどのアクティビティも楽しめるそうなので、時間がある方は参加してみるのもいいでしょう。
・ホテル・ヴィニャス・ケイローロ
住所:Km 11 de la carretera a San José de los Molinos, Ica
URL:https://www.hotelvinasqueirolo.com/en/
白い火山岩の街並みが美しい世界遺産の街「アレキパ」
リマから飛行機に乗り約1時間半の場所に、ペルー第2の都市であるアレキパがあります。ここは標高約2,335メートル、ミスティ、チャチャニ、ピチュピチュという3つの火山に囲まれた美しい古都です。
ノーベル文学賞作家マリオ・バルガス・リョサの出身地としても知られています。
「白い街」と称されるその旧市街は、周辺で採れる白い火山岩で造られた歴史的建造物が並び、街全体が世界遺産。街の中心であるアルマス広場には、壮麗なカテドラル(大聖堂)がそびえ立ち、市民や観光客で賑わいを見せています。
ここから少し歩くと、まるでひとつの街のような広大な敷地を持つ「サンタ・カタリナ修道院」があります。1579年に設立され、約400年もの間、外部から閉ざされていたこの場所は 、鮮やかなレンガ色や青く塗られた壁、美しい中庭が迷路のように入り組み、訪れる者を中世の世界へと迷い込ませます。
・サンタ・カタリナ修道院
住所:Santa Catalina 301, Arequipa 04001
URL:http://www.santacatalina.org.pe/
アレキパは「食の都」としても名高く 、街には「ピカンテリア」と呼ばれる伝統料理の食堂が数多く存在します。今回訪れた「ラ・ベニタ」は、地元の人々にも愛される名店です。
唐辛子の一種「ロコト」の肉詰め「ロコト・レジェーノ」や、川エビの濃厚なスープ「チュペ・デ・カマロネス」など、野菜と川の幸の滋味が美味しく溶け出した、栄養満点の逸品でした。
・ラ・ベニタ
住所:claustros de la compañia de Jesus 1° patio Cercado de, Gral. Morán 118, Arequipa 04001
URL:http://www.labenitadelosclaustros.com.pe/
アレキパでの滞在には、歴史的中心地から数ブロックの好立地にある「パラシオ・グアキ・バイ・アナナイ・ホテルズ」がおすすめです。
建物はスペイン統治時代の18世紀、クリオーリョ(中南米で生まれたスペイン人の子孫のこと)のグアキ伯爵によって建てられたもの。バロック様式かつコロニアル建築の大邸宅を改装しており、まさに世界遺産の街に宿泊していると実感する荘厳さです。
ホテルのディナーでは、メイン料理のラインアップになんとアルパカのグリルが! 脂肪分が少ない赤身の肉質で、獣臭さもない、淡白で美味しい牛肉という印象でした。
・パラシオ・グアキ・バイ・アナナイ・ホテルズ
住所:103 Calle Santa Marta, Arequipa
URL:https://palacioguaqui.ananayhotels.com/
インカ帝国の古都、天空の街「クスコ」
アレキパから飛行機で約1時間、標高約3,400メートルに位置するクスコへ。かつてインカ帝国の首都として栄華を極めた街で、その歴史地区は世界遺産に登録されています。
スペイン植民地時代の美しいコロニアル建築と、インカ時代に築かれた精巧な石組みが見事に融合した独特の景観を生み出しています。
街の中心は、アレキパ同様「アルマス広場」。インカ時代から政治と宗教の中心であり、スペインによる征服宣言が行われた歴史の舞台でもあります。広場に面して建つカテドラルの内部には、最後の晩餐のテーブルにインカの伝統食であるクイ(テンジクネズミの丸焼き)が描かれたユニークな絵画も。
クスコで必見なのが、インカの最高神殿「コリカンチャ(太陽の神殿)」の跡地に建てられた「サント・ドミンゴ教会」です。
スペイン人によって神殿の大部分は破壊されましたが、その土台となったインカの石組みは地震にも耐え、今もなお寸分の狂いもなく組まれたままの姿を残しています。
・サント・ドミンゴ教会
住所:Ahuacpinta 659-A, Cusco 08002
街の散策中には、カミソリの刃一枚通さないと言われる石組み技術の最高傑作「12角の石」も見つけることができます。
もう片側に残るスペイン人が築いた石組みと見比べると、その出来は一目瞭然。インカ帝国の職人たちの技術力の高さに、脱帽です。
雲上の謎多き空中都市「マチュピチュ」
いよいよこの旅のハイライト、世界遺産マチュピチュへ。マチュピチュへは、クスコから向かうのが一般的です。
まず、クスコから車で約2時間かけてオリャンタイタンボ駅へ向かい、列車に乗り換えます。今回は、天井まで窓が広がる観光列車「ビスタドーム」に乗ってみました。
列車がアンデスの山々を走り抜ける中、伝統音楽の生演奏や、華やかな衣装をまとったダンサーによる伝統舞踊が披露され、マチュピチュに着く前から旅の気分を盛り上げてくれます。
アマゾン川へとつながるウルバンバ川の渓谷美を眺めること約1時間半、麓のマチュピチュ村に到着。ここから専用のシャトルバスに乗り、つづら折りの道を登っていくきます。
標高約2,450メートルの山の尾根に広がるマチュピチュは、スペインの侵略から逃れるために築かれた、あるいは王族の避暑地であったなど諸説あります。しかし、アンデス文明は文字を持たなかったため、その目的は今も解明されていません。
山裾からはその存在が確認できないことから「インカの失われた都市」とも呼ばれ、1911年にアメリカの探検家ハイラム・ビンガムによって発見されるまで、数百年間、人知れず眠り続けていました。ちなみにハイラム・ビンガムは、映画『インディー・ジョーンズ』の主人公である探検家のモデルになったと言われています。
今回は、遺跡の全体像とその後ろにそびえる山「ワイナピチュ」の姿を最も美しく望める「CIRCUIT 1-B SUPERIOR TERRACE」というルートを予約していました。精巧な石組みの神殿や居住区、そして斜面に広がる段々畑。目の前に広がる光景は、あまりに幻想的で、ただただ息をのむばかりでした。
インカの叡智に触れる「モライ遺跡」と地中で調理する伝統料理「パチャマンカ」
聖なる谷には、マチュピチュ以外にもインカの叡智に触れられる場所があります。標高約3,500メートルの地に広がる「モライ遺跡」は、巨大な同心円状の段々畑が特徴的な遺跡です。この円の中心部と最上部では最大15度もの温度差があったとされ、さまざまな作物の品種改良や栽培実験をおこなうための「農業試験場」だったという説が有力です。
この日の昼食は、レストラン「ウヌ」でペルーの伝統料理「パチャマンカ」を体験しました。パチャマンカは、インカの言葉で「大地の鍋」を意味し、焼いた石を敷き詰めた地面の中に、ハーブなどでマリネした肉や野菜、ジャガイモなどを入れて蒸し焼きにする豪快な料理です。
大地のエネルギーをたっぷりと吸い込んだお肉や野菜は、驚くほどやわらかく、滋味深い味わい。インカ時代から続く食文化に、心も体も満たされる貴重な体験となりました。
・ウヌ
住所:Poblado De Tiobamba, Maras 08000, Peru, Maras, Cusco
ペルーに行くなら知っておきたい、旅のお役立ち情報
クスコ(標高約3,400メートル)など標高の高い都市では、高山病に注意が必要です。 深呼吸を心がけ、水分を十分に摂り、ゆっくりと行動しましょう。現地では、高山病の症状緩和に効果があるとされる、コカの葉のお茶がホテルやレストランで提供されています。
また、ペルーの治安は比較的安定していますが、都市部ではスリや置き引きなどの軽犯罪も報告されています。貴重品は肌身離さず持ち歩き、夜間のひとり歩きや人通りの少ない場所は避けるなど、基本的な注意を怠らないようにしましょう。
ペルーの通貨は「ソル(Sol)」。日本円からの両替はレートが良くない場合が多いため、米ドル(USD)を日本で用意し、現地の空港や両替所でソルに両替するか、キャッシングするのがおすすめです。ただし、クレジットカードの普及率も高く、市場や遺跡のトイレ以外ほとんどの場所では、米ドル(USD)での支払いも一般化しています。米ドルでの支払いの場合、おつりはソルで返ってくるので、そのソルを取っておくという手もあります。
一生忘れられない非日常体験にあふれるペルー。まとまった休みが取れたら、神秘と魅力あふれる世界遺産を巡る旅へ出かけてみては?
協力/ペルー貿易観光投資庁
Photo & text / Nakamori Riho